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2012/01/21

高齢化社会対応型ブランドが教えてくれる イノベーションの『5つのヒント』

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(via co.design
本来であれば、平均寿命世界1位の日本が生まなければいけない、広い世代の事を考えた健康や福祉関連デザイン。そんなデザインを実践するのがアメリカのデザイン会社Sabiだ。


⇒http://www.sabi.com/

Sabiは、McKinseyやベンチャーキャピタルでのキャリアをもつAsaaf Wand氏と、プロダクトデザイナーのYves Behar氏が組んで設立された。同社は人間工学に基づいた製品企画を得意とし、高齢化社会を見据えた一連の製品群をリリースしようとしている。

co.designは、19日の記事においてそんなSabiを取り上げ、『5 Innovation Lessons From A Breakthrough Brand Aimed At Aging Americans』と題した記事を投稿している。今回は同記事の示す「高齢化社会を見据える気鋭のブランドが教えてくれる、イノベーションの5つのヒント」元記事を翻訳しつつ紹介したい。


▶1: ホワイトスペースを見つける。

ホワイトスペースは、最近よく聞く言葉だが、手短に言えば「既存のビジネスモデルが活動の対象としていない領域」を指す。

Wand氏は、アフリカでモバイルブロードバンドを普及させるプロジェクト等に関わった後、ハイテク市場ではない分野での活動を考え始めていた。その頃目にしたニュースがSabiのアイデアきっかけとなった。ニュースが伝えていたのは「50歳以上の世代が、アメリカの消費の67%を占めている」というものだった。そこには人口統計的にみて大きな市場がある。にもかかわらず、5%のマーケットしかその世代に向けてアプローチを仕掛けていない。そしてその5%の中身の92%は、薬剤ファイナンシャルプロダクトだった。

このニュースを見た時、彼は「雷が落ちたような衝撃」を受け、市場調査を開始する。その世代へ向けたブランドを探した結果、ほとんど何もないということが明らかになった。

「すべてが非常に"メディカル"な物ばかりで、うんざりするよなものでした。私はもっとポジティブなものを作りたいと思うようになりました。」(Wand氏)


▶2: 深く掘り下げ『ニード』を見つける

発見した「消費とマーケティングのギャップ」は非常に魅力的なサインで、ビジネス機会はいろんな隙間に転がっているように思えた。しかし、Wandはまだ完全に納得しなかった。

マッキンゼーの血が、彼にもっと多くのデータ、証拠、確証を、と騒ぎ立てたのだ。そこで彼は、とどめを刺す為に、フォーカスグループインタビューや、サーベイを結構した。結果、6,000人からのデータを得る事ができた。

結果わかったのは、今の50代以上は、昔の50代以上の方々とは違うということだ。彼らが価値を置いているものは、より進化していた。かれらはオーガニック製品に入れこんでおり、世界に視野を向けていた。変化に確かに順応しおり、美にもこだわっていた。
彼らは、世話をしてもらっている人々ではなかった。子供たちを気遣い、両親を気遣っている。彼ら自身の視力や、関節が悪くなり始めているとしても。

この発見を期に、Wand氏はSabiを本格的にスタートさせる。



▶3: ブランド構築には一つのプロダクトでは足りない

Wand氏は事業のパートナーに、Yves Behar氏とFuseprojectを選んだ。

Fuseprojectは既に偶然にもエイジング社会を見据えた製品をリリースしていたので、新たに一製品を加えるのは難しくないように思えた。しかし、Wand氏の狙いはちがった。

まず、参考になる既存のブランドをリストアップした。OxoSimple Human等。彼は、そこに共通点を見いだす。すなわち、それらのブランドが、「これまでブランド化が成功した事のない市場でのブランディングを狙った」という点だ。例えば、Oxoは、キッチン用品、Simple Humanは、ゴミ箱だ。

Oxoのキッチン用品例

ブランド化されていない空間に入り込む時、競争は少ないし、より多くのマージンが期待出来るが、ブランドを一つのプロダクトだけで作るのは難しい。ヒット製品依存型になってしまうからだ。そして、全オーディエンスのニーズを満たす事はできない。

「もし、ブランドをスタートさせたいのであれば、"深さ"が鍵です。もしユーザーと日常生活に関して会話するのであれば、そのあらゆる側面に気を使うべきです。」(Behar氏)

そこでSabiのチームは、どのカテゴリが最もリーズナブルな価格で、多くのプロダクトを作れるかを考えた。そこで、彼らがたどり着いたのは、「クスリを飲むという苦痛」を解決するプロダクトだ。



▶4: 機能を"明示"しなくてもすむようにブランドをデザインする

Behar氏とWand氏は、どちらもプロダクトの「メディカルっぽさ」取り除きたがった。例えば、最もあけやすいクスリのボトルは緊急ハンドルやボタンのようなデザインだ。それらは赤く「私は関節痛です!」だと世界に向けて叫んでいるようなものだった。こういったプロダクトは"明示"によって、問題を解決しようとしたと考えられる。すなわち、ユーザーやすべての人に対し、「問題を抱えている/病気である」ということがわかるようにしたわけだ。(例えば以下のようなもの)

 
しかし、ターゲット世代は、自らを病弱とは考えていない。むしろ、その実感と戦っているのだ。ポイントは、ほとんどの人々が「必要であることを認めたくない」ようなものをどのようにデザインすればいいのだろうかという点であった。



たどり着いた解決策は、人間工学的な要素が前面に押し出されたものにはならなかった。ケースは青に塗られ、どこを触ればいいかが直感的に分かるようになっている。そして、その色自体がプロダクトのブランディングにも一役かっている。「緊急時のレバー」のような赤ではなく、「プロダクトの視覚的なアイデンティティ」となる青を選んだのは大きなポイントだ。




▶5: ターゲット層を超えたインクルーシブデザインを考える

Sabiはまだ始まったばかりで、Wand氏はまだ満足していない。このブランドデザインの成功は、ターゲット世代のニーズのおかげかもしれないのだという。すなわち、プロダクトをインスパイアしてくれるのは、ユーザー自身のニーズなのかもしれないというわけだ。

Sabiは既に、Agilityと、Mobilityという二つのラインの存在をアナウンスしている。公開時期は未定だが、これからもSabiのデザインから目が離せない。


[translated via co.design]
*ちなみにSabiは、日本の「侘び寂び」の「寂び」からとったそうです。

【リンク】
5 Innovation Lessons From A Breakthrough Brand Aimed At Aging Americans - Co.Design
http://sabi.com/

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